2020年 06月 LUXMAN D-10X 試聴レポート

今回は、LUXMAN社の新製品SACDプレーヤー、D-10Xの試聴レポートをします。
LUXMANのこれまでのディスク・フラグシップモデルと言えばD-08uですが、
新モデルは"08x"ではなく、"10X"とした所にメーカーの意気込みを感じます。
価格は、D-08uの定価110万円(税別)より10万円高い120万円(税別)です。

試聴に使用した機種は下記の通りです。
LUXMAN D-10X / 1,200,000円(税別)- SACDプレーヤー
LUXMAN L-590AX2 / 580,000円(税別)- プリメインアンプ(純A級)
LUXMAN ES-1200 / 580,000円(税別)- クリーン電源
FOCAL Sopra N゜2 / 1,560,000円(税抜/ペア)- スピーカー

意匠について

LUXMAN規格の本体幅440mmに精緻なブラスターホワイト仕上げは変わりません。
前作との大きな違いはフロントパネルが前面にオフセットした意匠になりました。
正面から見ると判りませんが、上や横から観ると本体と前面操作部に溝が有ります。
単に意匠では無く技術的に意味のある設計で、この部分は技術の項目で触れます。

他には、正面右の表示ディスプレイが大型になりました。
何故今回この部分を大型化したのか?個人的に疑問ですが、好みの範疇だとは思います。
個人的にはレフトサイドメカ構成(左側にトレー)の採用がとても好感が持てます。
過去多くの銘ディスクプレーヤーが採用してきた構成で、回路設計でも有利なのですが、
現在では左右対称の意匠が好まれ、採用メーカーほぼ無いので淋しい限りです。
ディスク開閉部もシャッタートレーを採用しており、静粛性と高級感があります。
シャッタートレーといえば、4月に試聴レポートしたESOTERIC K-01XDがこのトレーを
廃止したことを話題にしましたが、LUXMANは継続したので非常に対照的と言えます。
意匠に入るか分かりませんが、シャッタートレーは開閉が普通のトレーより3テンポほど
遅れて出ますので、せっかちな人には向かないかもしれません。

技術について

意匠の項目でも触れましたが、前面操作パネルが本体よりオフセットしています。
同社最高峰プリアンプ、CL-1000も同様の意匠設計を採用しており、
今後同社の最高峰モデルには、この技術(意匠)が採用されるかも知れません。
フロントパネルをシャーシからアイソレートすることで、
音質に悪影響を及ぼす振動・ノイズなどから繊細な信号を保護する設計意図と思われます。
この形式はPRIMARE社、Bow Technologies社など主に北欧製の製品で多く見かけられます。
次に、LUXMANオリジナルのメカニズム、LxDTMからLxDTM-i(改良版)になりました。
フレーム自体に直に組付け、一体化構造へと強化、外来振動を強力に遮断します。
また、LUXMANはこれまでDAC部にバーブラウン製DACチップを使用してきましたが、
世界初搭載となるローム社製高音質オーディオ専用DACチップを採用しました。
"08"からの大きな変更と言え、従来からの刷新と新しい"10"の番号が与えられました。
今後、LUXMAN製のデジタルプレーヤー全てがローム製DACチップになるかは不明ですが、
フラグシップ機への採用は、今後のLUXMANの音創りの1つの指標になると思います。
電源トランスや大容量電源回路の強化、ODNF-u搭載の完全バランスアンプ回路など
アナログ回路もデジタル回路の刷新に合わせて着実に精度をあげてきている印象です。
USB入力は最大でPCM768kHz/32bit、DSD22.4MHz/1bitの再生スペックに対応。
豊富なデジタル入力部とMQA-CD/MQAファイルにも対応など選択の幅を広げてくれます。

音質について

同社と言えば、中高域に独特の艶と厚みのある"ラックストーン"を思い浮かべます。
"ラックストーン"は長い年月をかけて熟成してきた同社の"顔"とも言える称号です。
ただ私見ではありますが、今作D-10Xはこれまでと些か趣が異なる野心作になります。
まず、第一印象は非常に爽やかで抜けが良く、特定の音域に引っ掛かりが無い音です。
感情的で前のめりな音では無く、一歩引いて冷静に音をコントロールしている印象です。
季節なら、秋彼岸頃の湿度が下がり涼しくなって来た昼下がりの晴天のイメージです。
クラシックがお好きな方なら、是非シベリウス作品を聴いて頂きたくなる製品です。

試聴を終えて

今回のD-10Xの音質の項目について、些か抽象的な表現が多く申し訳ないです。
しかし、実はこれを書いている私自身が一番戸惑っているのです。
普通、音響製品には企業風土、設計者の思想、製造精度など、何かが音に現れます。
しかし、D-10Xは"ラックストーン"かと問われれば、これまでの同社のニュアンスとは
明らかに異なる魅力が多くあり、"中高域の艶が~"と言う表現だけでは足りないのです。
ただ、1つ言えるのは、ローム社と開発した新DACチップ採用は大成功と言えるでしょう。
ディスクプレーヤーは、DACチップの特性(特徴)だけで良い音は出来ません。
それを支える光学メカ部、アナログ回路、シャーシー設計など多くの要因が絡みます。
今作はこの新型DACチップの為だけに創れられたと言っても過言ではなく、
同社が"08"から"10"に昇格させたのも単にDACチップの違いで型番を変えたのでは無く、
8番の向こう側を見据えた、同社の音創りの新たな決意表明と私は受け取りました。
最近のLUXMANは非常に野心的な製品を市場に送り届けてくれます。
120万円(税別)と言うプライスタグは大変高価ですが、それだけの価値はあると思います。
それは、音質説明にこれだけ戸惑い、文体での表現を投げ出した事は、そう多くないからです。
音には人それぞれの好みがあり、良い音や正しい音の定義は曖昧ではあります。
だから、私から言えることは"是非、店頭でご体感下さい"と言う一言に逃げるしかないのです。
今後の同社アンプ群も、この方向性に沿った物がラインナップされて行くのでしょう。
近いうちに、この掴みどころのないD-10Xの再試聴会が組めれば、と思いました。

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