2020年 11月 Accuphase E-280 試聴レポート

Accuphaseの人気機種、200シリーズの最新版E-280が満を持して登場です。
価格は、前作E-270から3万円高の33万円(税別)となります。
今回は試聴会として、当店所有のE-270とE-280を同条件で聴いてみました。
E-270好きの私が聴く、E-280の評価は、これ如何に…

試聴に使用した機種は下記の通りです。
Accuphase DP-430 / 600,000円(税別)- CDプレーヤー
Accuphase E-280 / 330,000円(税別)- プリメインアンプ
Accuphase E-270 / 300,000円(税別)- プリメインアンプ - 廃番
Accuphase PS-530 / 430,000円(税別)- クリーン電源
ELAC BS312 / 270,000円(税抜/ペア/スタンド別)- スピーカー

意匠について

一目見てAccuphaseと分かるデザイン、と一行で終わらす予定でしたが、
間違い探しレベルでよく見ると、実は細かいところが色々と変わっています。

まず、最初はフロントVUメーターガラスパネル内の型番表記の色です。
照明の具合で分かり辛いですが、E-280はゴールド系でE-270はホワイト系です。

念の為、書体を確認しましたが、これは同じ書体でした。
次に、アナログ式ピーク・パワーメーターの表記に注目です。
E-270から比べて、文字が大きくなり、より視認性が向上しました。

表示もE-270より10dB低い"-50dB"まで目盛りが刻まれており、
従来では針の振れ辛い小音量での再生でも、指針の動きが確認出来ます。
最後に、意匠に当たるかは分かりませんが、
本機から上位機種と同様に、メーターの照明が落とせる様になりました。

照明のON/OFFに連動して、指針の動きも止まります。
たかが照明のON/OFFで、と思われるかもしれませんが、プリ/パワーを切り離す事が
出来る本機は、当然ながらシアター用途で使われるユーザー様もいらっしゃいます。
暗室が必要なシアター需要において、この機能の有無は購入動機に大きく影響します。
E-270では照明が落とせなかったので、まさに"神"仕様と言えるのではないでしょうか。
マニアックですが、付属リモコンがRC-230から赤外線パルス方式のRC-250に変わっています。
基本的に寸法は同じで前作より利便性を上げ、意匠では無く音で勝負する印象です。

技術について

E-270がダンピングファクター"400"、出力120W/ch(4Ω)でしたので、E-280は
E-380の手前、"420 or 450かな~"と思っていましたが、まったく空気を読むこと無く、
E-270より25%UPのダンピングファクター"500"、出力120W/ch(4Ω)を達成しました。
これは、アンプ回路やNFB経路等の最適化によってアンプの出力インピーダンスを小さく
することで、ダンピングファクター"500"を実現、この努力には頭が下がる思いです。
同社独自技術"AAVA方式ボリューム・コントロール"にも4年の蓄積と深化が見られます。
E-280ではV-I変換回路の総出力電流量を従来の2倍に増やし、回路インピーダンスを1/2に
することでノイズを低減、部品面では高精度な薄膜抵抗をE-270よりも多く採用しています。
この改善でE-270より定格出力時のS/Nは1dB、EIA-S/Nは1dBの改善が行われています。
"たかが1dBと侮るなかれ!"、世界でも最高水準で製造されているAccuphase社であっても、
更なる改善/最適化を経て、"更に1dB"良くなる事は、もはや技術だけ無く執念と言えるでしょう。
最後に、E-280から増設ボードのスロットが2ヶ所に変更され、更に使い勝手が向上しています。
これまでは、アナログ or DACボードで悩まれるお客様が多かった様に思いますが、
2ヶ所増設対応により、購入に二の足を踏んでいた新たな需要層を掴むことが出来るでしょう。
4年間という時間で積み上げて来た小さな改善などが、大きな成果として実った印象です。

音質について

まず最初に聴いた印象は、"非常に静かでフラット"、"音の粒子が細かい"印象です。
ピアノは右手と左手の動きが良く聴こえ、音が交差する場面でも混線すること無く再現します。
バイオリンは、しなやかで高域に無理の無い再生、軽やかに立ち回り場面展開が素早い印象です。
ボーカルで印象に残ったのは、弱音域の音を丁寧に拾い上げ、空間の中に投影するイメージです。
やや後方に音像が定位するイメージですが、壁に張り付く事は無く、立体的に再現してくれます。
シンフォニーは、やや穏やかな印象、高中低の各帯域はフラットなバランスで癖が少ない印象です。
全体の調和を図りながら、意識して各パートに耳を澄ますと適正な解像度で再現している印象です。
低音域などの再生は、スピーカーがELAC BS312なので、物理的に出難い事を前提で述べますが、
低音の力強さや瞬発力は、E-380とBS-312の組み合わせにアドバンテージが有る印象です。
E-380と比べると、バランス型の設定といえ、強い"トルク感"を求める場合は上位機種が最適です。
ALLジャンルそつなくこなし、平均点以上をキッチリこなしてくる印象です。
E-280は素直に反応するアンプなので、電源・設置環境等で大幅なグレードアップが見込めそうです。
厳しい再生環境を求めないのであれば、E-280は十分なパフォーマンスを発揮してくれると言えます。

試聴を終えて

今回は、E-270とE-280を同条件で設置して比較試聴をしました。
E-270は、コスト制約の多い入門機をプレミアム機にまで引き上げた名機と私は思っています。
この功績は今後色褪せる事は無いのですが、後継のE-280はその重役を十分に果たしています。
まず、担当がE-270とE-280で感じた大きな違いは、音の粒子の細かさの違いが印象に残りました。
これは、E-270の音が"粗い"という訳では無く、E-280は更に濾した"均一の粒子"のイメージです。
音響機器は設計者の意図が音に反映されるので、両機の聴感上の優劣を付けるのは難しいですが、
定位・位相・動作安定感などの総合力は、スペック以上のクオリティーをE-280は達成しています。
"音質"の項目でも挙げた通り、E-270では音量を上げて行くと、ある位置でスピーカー間の音像が
"あやふや"で"ピンボケ"したような状態になり、慌てて音量を下げるのですが、
E-280は低から高まで、どの音量でも崩れること無く、同じバランスで安定して出力してくれます。
この安心感は、音楽鑑賞中に余計な考えごとを排除出来るので、より音楽に没頭させてくれます。
私見ですが、音のバランスはE-800に近いモノがあり、他上位機種とは異なる魅力があります。
E-280最大のライバルは同社E-380と思える程、ワンランク上を目指した製品であると言えます。

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