2020年 10月 DENON PMA-A110 & DCD-A110 試聴レポート
メーカー営業様のご厚意でDENONの創立110周年記念モデルの試聴をさせて頂きました。プリメインアンプが定価33万円(税別)でSACDプレーヤーが定価28万円(税別)です。
試聴に使用した機種は下記の通りです。
DENON DCD-A110 / 280,000円(税別)- SACDプレーヤー
DENON PMA-A110 / 330,000円(税別)- プリメインアンプ
B&W 805D3 ローズナット / 880,000円(税別/ペア)- スピーカー
意匠について
A110は2500NEをベースに、110周年記念モデルとして製作されています。このモデルの為に用意された新色グラファイト・シルバーが大きく目を引きます。
前作のA100が鏡面のブラックに対し、今回はシックで落ち着いた色合いです。
宣材写真の色合いより肉眼で見た印象は、チタンカラーに近い印象です。
私見ですが、ディスプレーが目立たないので、この色選択は素晴らしいです。
何気に表示ランプも白色に統一され、このモデルが特別であることを主張します。
他にも、全面パネル右下や内部トランスの天面に110周年のロゴが付いています。
TOPモデルの流れを汲むアルミ製トップカバーとフットの採用が、より質感を高めます。
創立100周年からの10年間を凝縮したモデルと言え、プレミアム感が高い仕上がりです。
技術について
外観の新色と特別なロゴに目が行きますが、実は大きく変更されています。A110は2500NEより10万円高いのですが、その価値は十分にあると言えます。
まず、PMA-A110(アンプ)について述べます。
A110では2500NEで採用されている27型アナログ式ボリウムでは無く、
高精度な電子ボリウムが採用されています。
アナログ式も電子式も其々に利点があるので、どちらが良いとは言えませんが、
2000番から続く、伝統的なアナログ式ボリウムを採用しなかった事は驚きです。
電子化の利点は、信号ラインの短縮化や高精度なコントロールが可能になります。
出力端子もバイワイヤー対応型から、シングル出力対応に変更されています。
シングルのスピーカー端子には、大型の金メッキ端子が目を引きます。
高い精度の信号をそのままスピーカーに伝える狙いがあると思われる設計です。
次に、DCD-A110(SACDプレーヤー)について述べます。
同社最新のアナログ波形再生技術"Ultra AL32 Processing"を搭載してきました。
2500NEをはじめ多くの機種が"Advanced AL32 Processing(Plus)"なので、
最新のアナログ波形再現技術をA110に搭載したのは大変驚きと言えます。
現在、DACチップを供給できるメーカーは限られるので、自ずと機器のキャラクター
を決める部分はアップサンプリングやビット拡張処理、アナログ回路などの
設計が大変重要な役割を担っています。
最新技術のお披露目にA110を選んだあたり、次の10年に対する意気込みを感じます。
音質について
まず技術的な知識を頭に入れずに素直に聴いてみました。非常に滑らかでしなやかな印象、高・中・低の各音域の繋がりが非常に良いです。
特定の音域に音が集まって特徴を創っている感じは無く、ナチュラルな印象です。
ピアノ・ヴァイオリン・女性ボーカルなど、過剰な演出をすることは無く、
本来の楽器が持つ特性や熟成感を音源データから丁寧に拾い上げている印象です。
ベースが2500NEなので、オーケストラの壮大さや、綿密さは上位機種に譲りますが、
むしろソロや小編成の楽曲ならA110で十分堪能できると思います。
また、従来のAL Processingは、同社らしい中低域に独特の厚みを持たせた音色
でしたが、本機搭載の最新回路はこれまでのコンセプトとは違う印象を受けました。
ソースDATAに対して、DENON流の誠実さが音に表れている印象です。
アンプを含め、より小さい信号から大事に扱い、スピーカーのユニットから
音が離れるまで責任を持って送り出しているような気持ちにさせてくれます。
従来とは一味違う、DENONサウンドに仕上がったという印象を受けました。
試聴を終えて
A110のレポートを書くにあたり、前作の記念モデルA100について思い返してみました。アンプは2000番(SE)SACDプレーヤーは1650番(SE)をベースに製作されました。
DENONの"2000"と"1650"は永遠に続いて行く"マジックナンバー"と思っていました。
10年の経過を長いと見るか、短いと見るかは人其々の感覚の違いがありますが、
この10年で特別な番号は"2500"に変わりアンプには"USB-DAC"が搭載されました。
私は、2000/1650世代なので、2500になった時はかなり衝撃(ショック)でした。
ただ、創立110周年記念モデルは感傷モードの私に大切な事を教えてくれました。
この10年の歳月で様々な新しいモノが生まれ、また、ひっそりと消えて行きました。
変わるコトと守るコト、長く会社が存続する上で常に難しい選択が迫られます。
A110は100周年から10年間の総括であると共に、次の10年を見据えた野心的モデルです。
技術の項目で述べた新しい価値が、今後の製品にどの様に反映されて行くのか?
この技術と音質の変化が、これからのDENONをどう変えるか?注目したいです。
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